masaibarの雑記

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副業としての個人開発と開業のすゝめ

はじめに

こちらは個人開発 Advent Calendar 2017の24日目の記事です。

私はサラリーマンですが、勤め先の企業が副業を認めていることもあり、プライベートでも「のぞきみ」というAndroidの既読回避アプリを開発しています。
リリースから1年が経ち、累計18万DLで平均評価は4.6と個人アプリとしてはまずまずの成果を残しております。
また、勉強目的で作り始めたアプリではありますが、開発だけに留まらずASOやマネタイズの勉強にもなっています。


と、どうでもいいプロダクトの宣伝はこのあたりにして、今回は内部の技術や作り方の話には触れず敢えてお金の話をしようと思います。

ちなみに本記事の対象としているのはサラリーマン兼個人開発者でプロダクトの収益が発生している人若しくはマネタイズも含めプロダクトを作ろうとしている人がメインとなります。

自分がやったこともないフリーランスを安易にオススメする記事ではありません

専業の方は当然知っている内容かと思いますので、読み飛ばしていただくか間違いを指摘するなどしていただけると幸いです。
また、会社にバレない副業の仕方については知りませんので、取り急ぎ副業OKの会社に転職とかすればいいんじゃないでしょうか。

目次

開業して事業とするという選択肢

個人開発をしており、そこでリリースしたプロダクトの中に継続して少なからず収益が発生している(広告や有料課金など)場合や、まだ収益が上がっていないがマネタイズにも本気で取り組んで行くつもりがある場合ならば、開業を検討する余地があると思っています。

開業すると聞くと「別に会社をやめてこれで起業しようとは思っていなんですが…」と思われる方もいるかと思います。
しかし開業 ≠ 起業 であり、独立するわけではなく会社で働きながら個人事業主として開業することは可能です。
実際に私自身は今年に開業して、サラリーマン兼個人事業主として二足のわらじを履いて活動しております。

そして個人開発の方にも帰宅後や休日のかなりの時間をつぎ込んで来たこともあり、来年の確定申告では雑所得ではなく事業所得として申告を行う予定です。

これから説明していく青色申告を副業でするためには事業所得、不動産所得、山林所得のいずれかの所得があることが必要です。

www.sumoviva.jp

「副業は雑所得と事業所得のどちらと判定されるか」という基準は曖昧であり、明確な判断基準は設けられていないようですが「継続的に行われているか」や「社会通念上事業と呼べるか」等で判断されるようです。
この観点に照らし合わせた時に、アプリ開発とは継続的に行えるものであり、例えば最近「1人で6時間で作って買収された」と話題になっているPeingのように仮に短時間で作ったものだとしても出来が良ければ事業価値も認められるため、事業と呼ぶのには非常に相性が良い分野なのではないかと考えています。

もちろん「片手間で作ってノーメンテ、月々100円も儲からない」みたいなのは雑所得として扱われる可能性もありますが、時間と労力を注ぎ込んでいるなら事業として認められる可能性があると思うので、あまり収益額自体は上がっていなくても開業を目指す場合は税理士さんや税務署に確認してみて下さい。

それではここからは開業すると何が変わるのかについて少し詳しく説明していきます。

メリット

まずはメリットを紹介していきます、結構長くなっちゃいましたが何を言いたいかと言うと
本気で個人開発しているなら、開業して事業所得として申告することによって可処分所得が多少なりとも増える可能性がある
というお話です。

確定申告の控除額が増える

まずはじめに、確定申告には白色(10万控除)、青色(10万控除)、青色(65万控除)の3種類があります。
当然控除額が多いほうが税金は少なくなりその他の恩恵も受けやすいですが、その分やるべきことも多くなります。
これは開業というよりも青色申告のメリットであり、その青色申告をするためには開業が必要になるということです。
ちなみに開業しない場合でも、副業での利益が年間20万円を超えると白色申告として確定申告を行う義務があります。

白色申告 青色申告(簡易) 青色申告(複式)
控除額 10万円 10万円 65万円
帳簿 簡易簿記 簡易簿記 複式簿記
届出 不要 必要 必要
一括で買える消耗品の上限額 10万 30万 30万
損益通算 出来ない 出来る 出来る

こうしてみると分かりますが、白色の場合でも記帳の義務があり青色申告の簡易簿記と殆ど手間が変わりません。 それでいながら享受できるメリットは青色の簡易簿記の方が多いので、そもそも申告が必要なくらい稼げている場合や逆に赤字の場合は青色にする旨味のほうが多いように思えます。

この辺はうめのんさん*1のブログに分かりやすくまとまっていました。

umenon.com

技術書や端末の購入が楽になる

技術書、検証用端末、セミナーの参加費用など、払おうとすると「うっ…」となってしまうくらいの金額のものでも、事業に必要なものであると言い切れるならば何もやましいことはなく経費計上して購入できます。
また私は借りていませんが、アプリのためにサーバーをレンタルしている場合などは当然それも経費ですね。

私個人としては副業で上がった収益はお小遣いではなく、更にプロダクトを伸ばしていくための資金として捉えています。

これに関しては、最近流れてきた記事がすごく良かったので貼っておきます。
記事のタイトルで誤解を生むかもしれませんがここでいう投資とは「設備投資」や「自己投資」です。

blog.craftz.dog

私自身も作業環境への投資としてMac mini (Late 2012)からiMac 2017 Retina 5Kに乗り換えましたが、控えめに言って最高でした。
AndroidStudioやGoogleChromeがメモリを食い荒らす事によるストレスが大幅に下がり、逆に作業効率が上がったことを実感しています。

ちなみに購入時点ではそこまで収益も上がっておらずギリギリどころか普通に赤字でしたが、作業効率の向上と「せっかく買ったのだから頑張ろう」という心理的な働きによりなんとか年内中にペイできたので良しとします。

開業しない場合でも、経費として物品を購入することが可能ですが消耗品として購入できる上限は10万とされており、それを超える場合は償却年数に応じた額を毎年計上することになります。
それに対して、青色申告の場合は少額減価償却資産特例として、30万以内までの資産を一括で経費計上することが出来るため上述のiMacはその制度を利用して一括で計上しています。

家事按分も出来る

経費として計上できるものは購入したものだけに限らず、水道光熱費や家賃、通信費も適切な割合であれば経費として認められます。
勿論プライベートでも使うものだと思いますので全額と言うわけにはいきませんが、実際に事業のために使っていると証明可能な分に関しては経費として計上できます。

損益通算も出来る(?)

これは専業の事業所得の場合はその年が仮に赤字だった場合に翌年に繰り越せるという制度です。
副業の事業所得の場合はどうなるかというと、本業のお給料ももらっているのでトータルで赤字になるということはほぼ起こり得ません。
そうなると、本業のお給料から副業で発生した赤字分を相殺し「年末調整で税金を払いすぎた」として還付金を受けられる可能性があります。

しかし、数年前に「(架空の)副業でわざと赤字を出し、給与との損益通算で還付金を受ける」という税ハックが逮捕者が出るレベルで横行した結果、現在は税務署も目を光らせているそうなので軽い気持ちでやるべきではありません。
ですので、もしも本気でやった事業としての副業が赤字になった結果としてこの制度を利用したい場合は念のため税理士さんに相談するのが無難だと思います。

デメリット

開業のメリットだけを並べた記事は枚挙に暇がないですが、当然デメリットもあるので思いつくものを紹介していきます。

純粋なプロダクトを作る以外の作業の増加

実際手間は増えるので、純粋に勉強目的でプロダクト作りを始めてコードだけを書いていたときよりもやらなければいけないことは増えました。
なので「俺は金のこととか考えず、とにかくコードを多く書きたいんじゃ!」というエンジニアの方には割と苦痛だと思います。

確定申告の義務が発生する

権利には義務もつきものということで、青色申告の恩恵を受けるためには確定申告が必要になってきます。

開業しない場合であっても、少なくとも収益が20万を超えた場合には確定申告が必要になります。
どうせ控除額が同じで手間も同じくらいの確定申告をするのであれば、白色でするよりも青色の方がお得感はあります。

保管義務がある

確定申告の義務に付随するのですが、申告で利用した帳簿書類や決算書類、証憑書類には7年の保管義務があります。
後日税務調査があった場合に保管されていないと申告の正当性を疑われ申告を全面的にやり直しになる可能性があるので、領収書などは100均のクリアファイルでも買ってきて月ごとに分けるなどして保管しておきましょう。

失業保険が貰えないかも

失業した場合でも「あなたは事業やってますから無職ではないですよね」という話になる場合があるそうです、確かに筋は通っている。
その場合失業保険を受け取ってしまうと不正受給扱いになる可能性もあるとかないとかなので注意が必要です。

但し会社を辞める前に閉業届を出していれば大丈夫という話もあるので、どうしても気になる人は開業前にお役所に確認して下さい。
ちなみに私の場合は開業後にこの事実を知ったのですが今のところは特に何も影響なくやっております。

開業の方法

ここまで具体的な開業手続きの説明をしていなかったので軽く説明しますと、主な工程としては

  1. 管轄の税務署を調べてそこに行く。
  2. 開業届と青色申告承認申請書を書いて提出する。

以上の2点になります。

拍子抜けしたかもしれませんが、本当にこれだけでした。
強いていうならば税務署は平日の8:30〜17:00しかやっていないため有給休暇を取る必要があったことと、書類記載時に利用するため印鑑とマイナンバーカードを持っていくことを忘れないようにするくらいでしょうか。

開業届の作成には開業freeeを利用すると、必要事項を入力するだけで簡単に作成することが出来ました。
その後の勧誘がちょっと鬱陶しいくらいに来たので開業届だけ出して解約しましたが開業freeeで開業届を作って出したらそのままfreeeで帳簿をつけるという選択肢もありだと思います。

屋号はいい名前が思いつかず空欄で出しました。
なくても開業できますが、あったほうが多分カッコイイです。

一点注意しなければならないのは、提出日についてです。

開業年度から青色申告を希望する場合は3月15日まで、もしくは事業開始より2ヶ月以内とされています。
つまり今から開業届けを出しても2017年分の収益を2018年の確定申告で申告することは出来ませんが、2018年分の収益を申告をしたい場合は2018年の3月15日までに届け出をすることによって2019年の確定申告時に対象とすることが出来ます。

開業に際しては、最寄りの市役所で税理士による無料相談会なども行われている場合があるので、興味のある方は一度「自分のアプリ開発の内容で開業できるか否か」を聞きに行くのが良いかもしれません。

でもお高いんでしょ?

個人事業主の開業届けの提出に関しては会社設立と異なり資本金などを用意する必要はなく1円も払っていません。
当日払ったお金といえば書類を提出しに行った税務署への往復の電車賃くらいです。

帳簿の記帳に関しては 、一番安いクラウド会計ソフトを使うと想定すると月々1000円くらいかかる認識でいたほうが良いと思います。

記帳・確定申告の方法

具体的な方法についてはネット上に詳しい記事が多くあるので割愛します、というよりも私も来年の確定申告が初めてになるので未体験です。

ちなみに私は縁あって税理士さんとお会いすることが出来たので、お願いして顧問税理士として契約していただいています。
日々の記帳などはfreeeMFクラウドを使うという方法もあるようです。
最初はこのどちらかを使いながら自分でも複式簿記を覚えようとも思ったのですが勉強を始めたところ流石に辛さを感じ、餅は餅屋ということでお願いすることにしました。

自分でやるよりも多少高くはなりますが、お金周りについて疑問に思った事はなんでも聞くことができ、万が一申告後に税務署に突っ込まれた場合は代理で答弁をしてくださるそうなので適正か、逆に安いくらいの出費だと思っています。

最近は顧問税理士にLINEで相談できるサービスなんてのもあるみたいですので、もし税理士さんと出会っていなければ会計ソフトとこのサービスの合わせ技を使っていた気がします。

もちろんこれらの契約料や月額利用料は必要経費として計上できます。

で、結局どうしたらいいの?

身も蓋もないですが、最終的には好きにすればいいと思います。

ただ私個人の考えとしては、開発だけに留まらずプロダクトの収益化やマネタイズも本気で考えているのなら開業について一考の価値はあると思っています。
最寄りの市役所などで定期的に税理士の無料相談会をやっている場合もあるので、私のような素人の書いた記事を読むよりも実際にお話を聞きに行ったほうが早いです。 収益額にもよりますが、面倒さが勝るなら開業せずに白色申告で出すのも選択肢の一つではあります。

ちなみに、申告が必要なレベルの収益が上がっていながら「収益も少額だし税務署も忙しいからこんなところなんか来ないよ〜」と言いつつ申告をしていない人もいるかと思います。

所謂脱税というやつです、追加徴税は最大で7年まで遡って行われるそうですのでお忘れなきよう。

当然指摘が入らなければ丸儲けであり、結果的にここまできちんとやっているほうが馬鹿を見ることになるのかもしれませんが、あくまでもサラリーマンの副業という立ち位置なので、少額の税金をケチった結果会社から解雇され職と社会的信用を失うリスクを潰す意味でもちゃんと申告をするべきだと思っています。

おわりに

終身雇用があってないようなこの時代ならばフリーランスという働き方もあるのでしょうが、大して優秀でもなく生来冒険心のの薄い私にそこまでのリスクを取る覚悟はありませんでした。
しかし急にそこまで冒険せずとも、本業でお給料をいただきつつ個人でもプロダクトを開発して少しずつ収益を増やしていくことのできる副業サラリーマンという攻守のバランスが取れた働き方の選択肢もあって、少なくとも私にはそれが合っていると感じています。

この辺りの話題に関しては、ヨッピーさんの本を最近読んだのですが、副業や独立に関して自分が何となく考えていたことがスッキリまとまっていました。小難しい話は抜きにしても普通に読み物としても面白いのでオススメです。

お金のことばかり書いてきましたが、エンジニアの皆様におかれましては勿論お金の面だけでなく副業で得た技術や経験を本業に還元できますし(あわよくばそれで成果を挙げて昇給を狙う*2)、逆に本業で得た知見を副業にも活かすことができるという好循環が形成されやすいという点においても個人開発はオススメです!

何が悲しくて12月24日の夜にこんな色気のない長文を書いているのか分かりませんが、文字数を数えてみたら9000文字近くなっていました。

来年はアプリを作るのもいいですが彼女も作りたい所存です。

お後がよろしいようで。

免責事項

本稿は私個人の意見であり、所属企業・部門見解を代表するものではありません。
掲載している情報の正確性については気をつけておりますが、本記事に含まれる情報または内容を利用することで、直接および間接的に生じた損失に関し、一切責任を負わないものとします。

本記事に嘘を書いているつもりはありませんが、私は税理士資格を持っているわけでなく副業エンジニアとして調べたことや税理士さんに聞いた話をまとめた内容となっております。
また、税法もコロコロ変わるようなので鵜呑みにせず、開業や確定申告をする際には税理士さんや最寄りの税務署などで専門家に確認していただければと思います。

そしてもし記述が間違っていた場合にはご指摘頂けると幸いです🙏

*1:Taxnoteにはお世話になりました。

*2:結局お金の話じゃないか!